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いわゆる田舎町だ。
田舎と言っても、バスが一日一本とか、ジャンプが発売日に店に並ばないとか、そこまでではなく。少し車を走らせれば、全国チェーンのスーパーはあるし、2時間くらいで県庁所在地のある都会に着く。
どこにでもある、小さな町。
私の生まれ育ったこの地区には、神社がある。
たんぼと畑に囲まれた丘陵地帯。
石造りの鳥居は朱など塗られてはおらず、地肌の灰色をさらしたまま奥に上がって行く苔むした石段を守るように佇んでいた。
本当に、古い、小さな神社。
神主はおらず、地域の人が細々と管理をして、四年に一度気持ちばかりの祭事があるくらいだ。
そんなところに、普通女子高生が一人でふらりとやってくる事などまずない。
ならば何故来たのかと言えば。
「…今年も、綺麗に咲いたなぁ」
薄紅色の花をつけた大木が両脇から寄り添うように鳥居を包んでいた。
ソメイヨシノでも、枝垂れ桜でもない。
雄々しく、かつ優雅なその花は彼岸桜と言った。
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