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 石段を降りきると、少しホッとした。  見上げると拡がる枝に桜の花。  年期の入った巨木なため、普通の桜のように手の届く所に花はない。遥か頭上に拡がる桜に、自然と笑みがこぼれた。  上に桜、足元には小さな馬頭観音と菫の花。 (いいなぁ~、春)  和むし癒される。  そんなふうに思いながら、真上に向けていた携帯のカメラを菫へ向けるために地面へ視線を落とした時だった。  キラリと。  桜の根本で何かが僅かに光った。 (?)  視線をカメラ越しの物から肉眼に変えて一瞬の光の先を追う。  草むらに片足を踏み入れて複雑に盛り上がり絡まる根の間を覗き込むと、苔や枯れ葉に混じり、石のようなものが挟まっていた。  汚れているが僅かに緑のような色がぼんやりと浮いている。 「なんだろ…ガラス?」  丸いフォルムのそれは自然物には見えない。  屈み込むと、周りの腐葉土に指を突っ込んで引き抜いてみようと試みた。軽く引っ張ってみたが、根に挟まれてびくともしない。 ・
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