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 泥の塊がこびりついていて、それを爪でガリガリ剥がしてみる。  次第に現れてきた姿は、その独特なフォルム故にひどくわかりやすい物だった。 「これって」  あらかた泥を剥がしてから服の裾で表面を擦る。ごしごし磨けば灰色の下から現れたのは、くすんではいるが翠緑の肌。  丸い曲線。円を捻ったような先端。中心の穴。  みまごう事なき。 「勾玉だあ!」  多少ヒビが入っているが原形そのままの物にテンションが上がる。  どうみても最近の物ではない事が見てわかるからだ。 「どうしてこんなとこにあるんだろ?いつぐらいのものかなあ」  もしマジに歴史的な物なら役場かどこかに提出しなければいけないのだろうか。  そんなことをぼんやり考えながら、桜の間から降り注ぐ日の光に勾玉を透かしてみた。  その時だった。 「おい」 「え」  空耳かと、思った。 ・
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