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詩織へ
あなたにお母さんのことは忘れなさいと言ったけど、会ったほうがいい。あなたのたった一人の家族だから。
あなたとお母さんを引き離したのは、私、あなたは捨てられたわけではない。
でもお母さんの再婚家庭で肩身の狭い思いをするならと思ってしまった。私は高垣の家でかんなを守ることができなかったお母さんからの手紙はまめにきていました。
大事に取ってあります。途中からパタリとあきらめたように途絶えてしまったの。
虫のいい話しだけど、お母さんに会って、おばあちゃんかんなの相続分を渡してほしいのよ。
詩織、おばあちゃんの最後のお願いを聞き届けてちょうだい。
もう一通の手紙は、このように締められていた。<おばあちゃん、ずるいわよ。今になって、こんな…こんな遺産なんかいらないのに>
祖母が残していった手紙の束は、すべてアメリカから母、かんなが送ってきたものだ。
結婚して幸せにしているからはじまり、大半は詩織の様子を尋ねていたものだ。夫が詩織を引き取りたいとも、言っている新しい命が生まれる前に妹が幼いうちにと、詩織を引き取りたいと懇願する手紙から、詩織が成長するにつれ、あきらめつつ様子を尋ねる内容、最後はガンで闘病しながらも手紙の返事がこない不安が訴えられ、ぷつりと返事が途絶えたようだ。祖母の日記には、毎回返事はだしているのにと不安を綴り、手紙が途絶えてガンの闘病のあとの様子などを心配し、詩織に母のもとに行くように言おうか迷っている様子が綴られていた。母は生きている。詩織のもとに電話をかけてきたほどだから。
それほどまでに祖母は自身を責めていたなんて。
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