4章

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<私、弁護士の真鍋と申します。名倉彩様から遺言書をお預かりしております。依頼者様のご意志でご自身の三回忌に開封するようにお受けいましました> <弁護士さん、前置きはいいからさ。早く聞かせてくれよ。ばあさんの遺言ってやつをよ> <かしこまりました。 彩様所有の財産の目録を申し上げます。 ①高垣彩名義の預貯金 ②名倉彩名義の預貯金 ③名倉詩織名義の預貯金④箱根地区のマンション⑤那須地区の別荘 ⑥ご自宅の土地、屋敷 以上六点でございます> <やっぱり、預貯金に別荘まであったんだわ> <弁護士さんよ、われわれは自宅しか知らないんだ。だから自宅を売却して三人の兄妹で分配したんだよ> <詩織よ、やっぱりあの子が持ち出していたんだ> <何も知らない顔してあの娘…> <失礼ですが、ご自宅の売却資産は三人でお分けになられたのですか> <そうだよ> <彩様の相続人は4人とお伺いしておりますが> <ああ、長女の姉は娘をおいて消息不明だからな> <ご長女のカンナ様でございますね。この方は、相続人にはなっておりませんが、お孫さんの詩織さん、彩様の養女で、れっきとした相続権利が生じておりますが、詩織様への分配はなかったというわけですね> <それは、あっ> <あの家はおれたちの父親の遺産でばあさんが購入したんだ。詩織は親父とは無関係だしな。なに微々たる遺産だったよ> <まだ遺産があるし、詩織名義の預貯金もあるんだ。それから遺産分割して帳尻を合わせればいいだろう> <彩様の遺言には、このように記されております①自宅の土地、屋敷は売却し、三人の子と詩織の4人で分割すること。 ②箱根、那須の別宅は、長男、次男に権利を譲る。 ③高垣姓の預貯金は長女に遺産として権利を譲る④名倉詩織名義の預貯金は詩織に渡す。 ⑤名倉彩名義の預貯金は次女と詩織で分割すること> <まっまあ、仕方ないか、ばあさんの遺言だしな> <ただし…> <ただし?なんかあるのかよ、まだ> <詩織の相続を拒否した場合は自宅売却資金は以下に指定する養護施設に全額寄付すること> <なんだと!> <その名倉姓の預貯金は、詩織一人に相続させる那須の別宅の権利を詩織に譲る。 箱根別宅を売却した資金は長男、次男で均等に遺産分割すること。以上でございます> <冗談じゃない。自宅を売った金を詩織に分けてやればいいんだろうよ。なあ、弁護士さんよ>
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