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一台目は、二頭立ての真っ赤な箱馬車で、黒い服の品のいい老人が、御者席に。
二台目は、同じ二頭立て、青い箱馬車に、魔術師の男が二人、御者席に。
三台目は、馬は一頭、箱ではなく、赤い布をかぶせたホロ馬車で、御者席にはふわふわ髪の少女が、座っている。
町の住民が――貴族も庶民も関係なく、見送りしようと、門の周囲を囲んでいた。
一番に姿を現したのは、ランシアだ。
普段着ではなく、略式の騎士見習いの、青い服を着ている。
彼は、いろんな人物に声をかけられながら、挨拶を返して門まで来たが、馬車が三台もあるのを見て、ちょっと目を丸くした。
立ち止まり、キョロキョロしてしまう。
すると、人波をかきわけて、ヒオウがやってきた。
彼女も普段着から、正式な衣装に着替え(させられ)ていた。
「……ランシア? なんだ、ランシアも戻るのか! じゃあ一緒だな!」
青い少年を目にしたとたん、嬉しそうに駆けてくる、ヒオウ。
だが、すぐにその背後から、
「ご機嫌よう、イーステッドのレディたち。僕はちょっと用事があって、町を離れるけれど、すぐに戻るから――ん? あれれ?」
ヒオウが、あからさまに、ゲ、という顔をした。
ヴィスアードは、両手をひろげて二人の方に歩み寄る。
「なんだ、君達もエルンに戻るのか! じゃあ一緒に……」
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