3330人が本棚に入れています
本棚に追加
/984ページ
「闇……」
眠気は消えたものの、目の前にひろがる闇色の霧は、不気味だ。
ミーアはつい、隣の少年に身を寄せて。
「……ディアン?」
少年の横顔が、青白いのに気付く。
「……何でもない」
(え――でも)
膝を力強く掴む少年の拳に、そっと手の平を重ねる。
冷たかった。
しばらくそうしていると、少女の体温が少年の手を、温めていった。
「慣れてねぇと、闇の感触は気分悪くなるかもな。大丈……」
言葉の途中で、チラッと視線を寄越したジギルが、ディアンの顔色の悪さにギョッとした。
「な、どう……っ」
その口を、ディアンの手が塞ぐ。
無言で首を横に振った。ラグルが流してくれる風のおかげで、少しはマシになってきたから。
「……いいから。騒ぐな」
「……」
赤髪の青年は、眉を寄せたものの、会場に視線を戻す。
戦斧の男が、ようやく動き始めた所だった。
巨大な斧を頭上に振りかぶり、一気に降り落とす!
ドガガッ! と、派手な音と共に地面に穴が開き、バッとオレンジの炎が飛び散った。
火の――魔術。
だが、その炎の色も濃度も、今までの魔術師達の火とは、違う。
一撃で、闇の霧が半分以上、払拭されていた。
おお、と見学者達から、感心した声があがる。
最初のコメントを投稿しよう!