Ⅴ ~魔都・エルン~

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「闇……」 眠気は消えたものの、目の前にひろがる闇色の霧は、不気味だ。 ミーアはつい、隣の少年に身を寄せて。 「……ディアン?」 少年の横顔が、青白いのに気付く。 「……何でもない」 (え――でも) 膝を力強く掴む少年の拳に、そっと手の平を重ねる。 冷たかった。 しばらくそうしていると、少女の体温が少年の手を、温めていった。 「慣れてねぇと、闇の感触は気分悪くなるかもな。大丈……」 言葉の途中で、チラッと視線を寄越したジギルが、ディアンの顔色の悪さにギョッとした。 「な、どう……っ」 その口を、ディアンの手が塞ぐ。 無言で首を横に振った。ラグルが流してくれる風のおかげで、少しはマシになってきたから。 「……いいから。騒ぐな」 「……」 赤髪の青年は、眉を寄せたものの、会場に視線を戻す。 戦斧の男が、ようやく動き始めた所だった。 巨大な斧を頭上に振りかぶり、一気に降り落とす! ドガガッ! と、派手な音と共に地面に穴が開き、バッとオレンジの炎が飛び散った。 火の――魔術。 だが、その炎の色も濃度も、今までの魔術師達の火とは、違う。 一撃で、闇の霧が半分以上、払拭されていた。 おお、と見学者達から、感心した声があがる。
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