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可愛い弟子が、立ち去る気配を追いながら。
横になったベッドの上から、白み始めている空を、見上げて。
レイギール司書長は、嫌そうに、吐息を吐き出した。
「……また竜かよ……アイツじゃないだろうな…」
カーン、カーン、カーン……。
朝の鐘の、涼しげな音色が響く。
学舎の寮の一室で、青い髪と、青い瞳の少年……ランシアは、目覚める。
眠そうに何度か瞬きし、明るい窓の外を見て、ゴソゴソと起き出す。
反対側のベッドには、相部屋のもう一人の少年が、気持ち良さそうに寝ている。
普段着に着替え、もう一人を起こすかどうか、悩んでいると――コンコン、とドアがノックされた。
無言でドアを開けると、寮の世話係りの使用人が、手紙を渡してきた。
「速文です。ランシア様宛てに」
「……」
ランシアは、その場で封を解き、中身を読んだ。
「……」
「馬車の用意は、できております」
仕方なく、こくんとうなずく。
使用人が帰っていってから、ランシアは、ふう、と、やるせないため息をついた……。
早朝にも、かかわらず。
イーステッドの門の内側には、三代の立派な馬車が、ズラリと並んだ。
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