Ⅴ ~魔都・エルン~

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一台目は、二頭立ての真っ赤な箱馬車で、黒い服の品のいい老人が、御者席に。 二台目は、同じ二頭立て、青い箱馬車に、魔術師の男が二人、御者席に。 三台目は、馬は一頭、箱ではなく、赤い布をかぶせたホロ馬車で、御者席にはふわふわ髪の少女が、座っている。 町の住民が――貴族も庶民も関係なく、見送りしようと、門の周囲を囲んでいた。 一番に姿を現したのは、ランシアだ。 普段着ではなく、略式の騎士見習いの、青い服を着ている。 彼は、いろんな人物に声をかけられながら、挨拶を返して門まで来たが、馬車が三台もあるのを見て、ちょっと目を丸くした。 立ち止まり、キョロキョロしてしまう。 すると、人波をかきわけて、ヒオウがやってきた。 彼女も普段着から、正式な衣装に着替え(させられ)ていた。 「……ランシア? なんだ、ランシアも戻るのか! じゃあ一緒だな!」 青い少年を目にしたとたん、嬉しそうに駆けてくる、ヒオウ。 だが、すぐにその背後から、 「ご機嫌よう、イーステッドのレディたち。僕はちょっと用事があって、町を離れるけれど、すぐに戻るから――ん? あれれ?」 ヒオウが、あからさまに、ゲ、という顔をした。 ヴィスアードは、両手をひろげて二人の方に歩み寄る。 「なんだ、君達もエルンに戻るのか! じゃあ一緒に……」
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