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「あっちは、鍛冶屋のロッケルさん。ここ数年は、あの人の独占優勝だね。武器も、自分で作っちゃうからね。しかも、若い時は近衛騎士だったし!」
ラグルは、目の前の戦いに夢中だ。
風を流すことだけは、忘れずに、目は会場に釘付けである。
ジギルも、試合経過が気になるのだが、いきなり具合が悪くなったディアンの様子も、気になったらしい。
時々、少年の様子をチラチラ確かめながら、不安げなミーアにも声をかけた。
「心配するな。多分、感じたことのない魔力に、あてられたんだろう。我慢できないなら、外に連れてくけど」
「……よけいなことすんな」
ギロ、と睨まれジギルは肩をすくめ、ミーアは心配ながらも、ディアンが弱音を吐きそうにないと判断した。
「大丈夫です。いざとなったら、私が連れていきますから」
「お。さすがに、お嬢ちゃんの言う事は、聞くか」
「……」
言い方が気に食わなかったので、片脚を蹴っ飛ばした。
「いてっ」
「もう、ジギルうるさいよ。静かに見てられないの?」
会場から、一瞬も目を離さないラグルに注意されて、三人は試合の方に集中した。
また、灰黒の娘が闇の霧を作ろうと、懸命に集中していた。
真ん中では、剣と斧が激しい火花を散らしている。
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