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「……馬鹿。今はそんなこと言う場面じゃないでしょっ」
「今だから言っておくんだよ、ライカ。君が生きて帰って来られる保証など何処にも無いのだからね。せめて消え去る前に言っておきたかったんだ」
芝居がかった口調、仕種。男は微笑みながらライカの方を向く。
「世界中で誰よりも愛してるよ――ライカ」
真剣な声音。照れている様子も、ふざけている様子も無い。普段から自分を偽る男からの、偽りの無い精一杯の告白。
「私も、世界中の誰よりも愛してる――アルザス」
ライカは微笑む。どちらから、という風もなく抱きしめ合う。周りの音も稲光も暴風雨さえ世界から消えた気がした。
憂いを称えた男――アルザスの顔が近付き、唇が触れるだけのキスをする。
強く抱きしめ合い、もう一度口づけをして離れた。
「じゃあ、行ってらっしゃい。なるべく生きて帰って来るんだよ?」
「……ええ。必ず生きて帰って来るわ」
アルザスの言葉とは少し違う、普段なら絶対にしない約束事。守れない約束は、約束ではないから。
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