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Ⅰ
暗い世界に、一筋の光が差し込んだ。光は広がり、確実に私を目覚めさせていく。
まだまどろむ意識の中、声が聞こえた気がした。
「――」
何て言ってるのか全然わからない。寝ぼけた頭では状況も何も理解出来ない。
ただわかることは、その声音には私が向けられたことの無い優しさと、焦燥感のようなものを感じたということだけ。
目を開けたら、そこには何時もと変わらない光景が広がっていた。
木造の小屋みたいな部屋。所々木が腐り、ボロボロになっている。壁際には本棚が置いてあって、部屋の中央には粗末なテーブルとイス。私が寝ているベッドも粗末な物だった。
上半身を起き上がらせ、はっきりと覚醒した頭で思う。
――今日も最悪の一日が始まってしまった。
朝から憂鬱な気分になり、それを追い払うように頭をふるふると振るう。私の長い銀髪が靡いた。
「……はあ」
頭を振るだけで憂鬱な気分が取れる訳もなく、始まってしまったものは仕方ないとベッドから降りる。
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