一章・死後の世界

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「さっきも言ったでしょ?私には記憶がないって」 「あぁ」 「実は乙音もなのよ」 俺が乙音を見ると、乙音は首を縦にこくこくと振った。 どうやら本当のことらしい。 「私達〈必要悪の教団〉の創設者とその中心12幹部は、記憶がないの」 「記憶がない……?」 「そうなの。普通の死者は生前の記憶を始め、死んだ瞬間の記憶もあるんだけどね」 「死んだ瞬間も?」 「そうよ。他殺の人には、かなり恐怖体験としてインプットされるらしいわよ」 「だろうな」 俺は、自分の胸に包丁が刺さっている様を想像した。 ……ホラーだろ。 「何故私達には記憶がないのか。そしたら、一つの仮定に辿り着いたのよ。私達は死んでないんじゃないか、ってね」 「ちょっと待て!此処が死後の世界だって馬鹿なことを言ったのはお前だぞ!?」 「あんたホントに頭悪いのね。それに私はお前じゃなくて深琴」 すると乙音がにこにこして言ってきた。 「お兄ちゃんお馬鹿さんなのー?」 「違うから。深琴の言葉は鵜呑みにするなよ」 「何よそれ。失礼ね!」 .
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