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「何だよそれ……」
深琴の手の平には、バスケットボール大のピンクの色をした炎が浮かんでいた。
炎により、周りは結構な暑さだった。
「分からないの?炎だけど」
「……いや、そういうことじゃなくってさ」
「何よ?」
詰め寄ってくる深琴。
当然その手には、ピンク色の炎が浮かんでいるわけで……。
「危ないって!危ないから早くしまえって!」
「しょうがないわね」
深琴はやれやれといった様子で、炎が浮かんだままの手で握り潰した。
炎は音もなく、さっと消えた。
「今のは、霊力というもので具現化したもの。通常霊力とは、生者の暮らす世界に心残りがある者が使う力のことなの」
「心残りって、よくある積年の怨みとか、そういう類い?」
「まぁそれもあるけど、残してきた家族とか、友人が気になったりとかが多いわね」
「家族か……」
記憶がない俺。当然家族のことも思い出せなかった。
俺は、どんな生活を送っていたんだろう……。
「要するに、一般的なこの世界の住人で気にならないないヤツはいないってことよ」
「だろうな」
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