8人が本棚に入れています
本棚に追加
「今は…あなたが…神…なん…でしょう?」
幽閉され、誰かと話すことさえ久しぶりである男は、擦れた声を振り絞る。
訪問者の男は、傲慢に笑った。
「だとしたら、何だ?」
「何も…ない…ですが」
今代の神の座にある男に、先代の神は無表情で答える。
神はまた舌打ちするが、蹴ることはしなかった。
先代の両手足には、戒めの術が施されている。
「逆に…ゲホッ…問います」
「何だ?」
咳き込み、それでも先代の神は続ける。
「あな…たは…何が…したいの……です…か?」
擦れていたが、何処か大きな意思を感じさせる、不思議な声だった。
神の額には青筋を浮かび、握った拳が怒りで震えていた。
そして、怒りを爆発された。
「死にやがれッ!」
神は掌を神に向け、蠢かせた。まるで人形を繰(ク)るかの如く。
ぐぎっ
肉が絶たれる嫌な音がし、先代は息を飲むように、短く悲鳴をあげた。
「『傀儡(クグツ)の繰り手』を舐めんなよ、下衆(ゲス)」
切り落とされた右腕が、光によって新たに生み出される姿を見て、神は吐き捨てるように言う。
「そこで大人しくしてろ、先代」
そしてまた塔には、気味の悪い静寂が続く。
.
最初のコメントを投稿しよう!