間章・知らない場所で

5/7
前へ
/61ページ
次へ
時同じくして、死後の世界の地図に載らない辺境の地。 雪は吹雪き、地面へと積もっていく。 半ば枯れ掛けのような針葉樹林が、最期の足掻きかと思えるような姿で並び、雪は容赦なくその上に降り掛かる。 山というよりは、崖を無理矢理に切り開いたような、荒々しい道を進む。 この雪道を行くには軽いと思える服装で、女は歩いていた。 美しい体のラインに沿った、スーツドレス。手には会社員のような、革の鞄をもっていた。 「視界が悪いわね」 特に誰に話すというわけでもなく、女は呟く。 そして、腰まで届く長い金髪を掻き上げるという、何気ない仕草をした瞬間。 ゴゴゴゴ── 地響きを轟かし、崖道に大砲が現れた。 錆こそついているものの、存在感と威圧感を示した、黒光りする大砲。 それは雪の吹雪く崖道には、有りもしない物だった。 名を『ラグラホルン』という、名にし負う宝の中の一つだった。 「発動」 女は、短く呟いた。 .
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加