一章・死後の世界

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「……死後の世界……?」 「その通り。あなたは死んだのよ。そして此処は、死んだばかりの人間が運ばれてくる病院ってわけ」 少女──菜那原深琴はそう事もなげに言ってのけた。 けれども俺にとっては、そんなに軽いことではなかった。 「死んだ?まさか、そんな馬鹿な!」 「あら、気付いてなかったの?でも此処に来た人の中には、死んだことに気付いてない人もいるから大丈夫。直ぐに分かるわ」 「待てよ、俺は生きてるさ。ほら、体だって動く。それに、ついさっきまで……」 「さっきまで?」 言葉に詰まった俺に、菜那原は訝しげな顔で見てくる。 整った綺麗な顔だったが、そんなことを気にしていられる状態ではなかった。 「…あれ?…さっきまで何してたんだっけ?」 俺の言葉に、深琴は黙った。 そして顔を手で覆った俺に、菜那原は真剣に聞いてきた。 「あんた、まさか記憶がないの?」 俺はうなだれて、ため息をついた。 認めたくないが、認めざるを得ないことだった。 けれども頼れるのはこの、目の前にいる少女だけ。 「……あぁ、何も覚えてない。家族のことや自分の名前でさえもな」 .
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