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「今から120年前。神は狩りを始めた」
「おい、急に何言ってんだよ」
けれども菜那原──いや、深琴だっけ──は俺を無視して話を続ける。
深琴の目線は、僅かに下へと落ちていた。
「死なない世界だから、地上から死んだ人間がやってきて、人口は増える一方だったの。それを減らすべく、神は天使を使ってこの世界の人間の虐殺という、狩りを始めたのよ」
「死なない世界なのに、虐殺なのか?」
「それが最初の話に繋がるのよ」
俺の質問に、深琴はため息をつく。
そして長い黒髪を指で遊びながら、また話しだす。
「この世界は誰も病まない。それは変わらなかった。けれども死ぬようになったの」
「病まないのにか?」
「そう。殺されたりしない限りはね」
けれども俺は思う。
滅多なことがない限り、殺し合いなんて生まれない。
生まれたとしても、地上からやってくる奴の方が多いんじゃないか?
俺が深琴にそう訊ねると、派手にため息を吐かれた。
「あんた馬鹿?私たち同士で殺し合いをするんじゃないの。さっき言ったでしょ、天使に殺られるって」
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