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「それこそ120年前は、いくら銃で撃たれようとも、頭を鈍器で殴られようとも死ななかったのよ。その痛みを感じるだけで」
「痛いんだ……」
「懐かしいわ、あの頃が」
俺はその台詞に、引っ掛かりを感じた。
「懐かしいって深琴、120年前だぞ?」
「何か変なこと言ったかしら?私はもう、この世界に来て120年経ってるわ」
「……120年?」
俺は改めて菜那原深琴という、目の前の少女を見た。
黒髪に、頭上で結った一掬いの髪が可愛らしく、モデルの様なすらりとした体系。
あってBカップ、恐らくAカップであろう貧弱な胸が、唯一の残念な所だ。
けれども、滅多に見かけないような可憐な美少女である。
いくら高く見ようとも、見た目は17歳位である。
「……お前今何歳なんだよ」
「レディに年齢を訊くのは野暮ってものよ。でもいいわ、特別に答えてあげる」
深琴は上から目線でそう言い、えっへんと胸を張った。
「死んだ時が16歳ぐらいで、こっちに来てからは120年だから、年齢としては176歳。まぁこの世界は成長も老いもないから、16歳と思ってくれて構わないわ」
「176歳……」
俺は絶句仕掛けたが、ふと疑問に思って疑問を口にする。
「何で16歳ぐらいなんだ?はっきり覚えてないのか?」
少し沈黙のが訪れた。
どうやら訊いてはいけないことだったようで、出会って間もない者の質問としては、不躾だったかもしれない。
そう思い、謝罪しようとした時だった。
「私にも、記憶がないのよ」
深琴はそう言い、様々な感情が入り乱れた、曖昧な表情で笑った。
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