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深琴は一つ咳払いをする。
俺が疑い深い目で見ているのも気にしていないのか、彼女は両手を広げ、高らかに宣言した。
「その名は〈必要悪の教団(ニシサリーゥ゙ィース)〉よ!」
「〈必要悪の教団〉?」
「そう。格好いいでしょ」
確かに格好いいし、その〈絶対的聖光の騎士団〉とやらよりも好きだ。
けれどもやはり大袈裟で、何処かのアニメから取ったような感じもする。
それを訊くと深琴は怒るかと思いきや曖昧に笑い、窓の外を見た。
「せめてもの願い、ってヤツよ。あんたに言っても分かってくれないだろうけどね」
「せめてもの、か……」
俺は深琴を何も知らない。
ただ彼女が計り知れない何かを抱えているのだろうと感じた。
それに気付いて、敢えて気付かないフリをする。
会って数分の、おまけに得体の知れない男に「悩ミ相談ニノリマスヨ」なんて言われても、迷惑なだけだろう。
深琴の瞳は長い睫毛の下に隠されて、何も見えなかった。
と、その時。
「みことおねえちゃ~ん!」
萌え系アニメの妹キャラみたいな声が、病室の扉が開くと同時に聞こえてきた。
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