触れられず、見ることも出来ない傷

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 結論から言うならば、初めてオミトと図書館の以外の場所への出掛け――――俗世的な言い回しを真似るならば、デー・・・いや、単なる外出(とは言っても図書館からたかが十数メートル移動しただけなのだが)は、少々残念な結果に終わった。  とある有名なパティシエの新作発表会は、市民ホールにて14時から行われることになっていた。そこで私とオミトは午前中はいつものように図書館で過ごして昼食を済ませた後、様子見に向おうと決めていた。だが、その日に限って普段昼食をとっているロビーは老人達が占領し、何やら老人会での旅行先を話し合っていた。館内に他に飲食が可能な場所はないので、仕方なく外に出ることになった。日陰のベンチを探す(引き籠りは日差しを長時間浴びると死んでしまう)ため、図書館周りをうろうろしていたため、いつもより時間がかかってしまった。  遅くなったとは言え急ぐ必要はないので、いつも通りご飯を食べ、14時半頃にホールへと向った。  そこには何故か、パトカーや救急車が何台も停まり、多くの警官らしき人達がホール前に集まっていた。
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