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落ち着いて話せる場所。真っ先に思い付いたのは屋上だった。
階段を上っている途中は会話が無かった。それでも、この2ヶ月に比べて薫との距離は随分縮まった。
だから、今はもう苦痛ではなかった。
屋上に出ると、思った通り人は誰もいなかった。
普段はカップルやら、なんやらで人が多いけど、文化祭の準備ということだろうな。
この学校の屋上はベンチが設置されている、なんて気の利いたことはされておらず、耳をすますアニメの様に立ったまま話すことになる。
秀「薫…」
薫「…うん。何?秀くん」
今まで通り、薫は俺を見て話を聞いてくれる。
まるでこの2ヶ月が無かったかのように。
秀「夏休みは、本当にすいませんでした!」
ちゃんと頭も下げて、必死に謝る。
実際、あの日については薫に非はない。悪いのは俺だけだ。
う~ん、ってかいつまで頭下げてればいいんだ?薫が何かアクションを起こしてくれないと、いたたまれなくなるんだけど。
とりあえず、薫の顔を見てみた。
そこには、自体を把握していない表情があった。
秀「………あの、薫?」
薫「…………………あ」
おぉぉ!?………あ、って何!?何でオロオロしだしたの!?
秀「薫、まさか忘れてました?」
薫「そ、そんなことないよ!ちゃんと覚えてたよ!…でも、この場合は忘れてたことにしてた方がいいのかな?やっぱり覚えてないんだよ!」
秀「考えてること全部声に出てます!思惑丸聞こえですから!」
こいつ、今の今まで忘れてやがった!2ヶ月間悩んだ俺って何なの………。
薫「ま、まぁあれだよ。あんまり気にしても仕方ないかなって思って」
秀「じゃあ、薫は俺といても平気なんですね」
薫「ふぇ?元から平気だよ?」
秀「えぇ、話し掛けたらビクビクしてたじゃないですか」
薫「あ、あれはただびっくりしただけだよ。秀くんこそ、その、私のこと嫌いになったんじゃなかったの?」
秀「俺が?まさか、薫を嫌う訳ないじゃないですか」
聡の言う通りみたいだな。
二人とも勘違いしてただけなのか。
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