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ゆっくりと顔を薫の方に向けると、薫の目にうっすらと涙が浮かんでいるのを見つけた。
薫「何でそんなこと言うの!?秀くんと同じように、私も絶対秀くんを嫌いになったりしない!なのに、何で嫌われようとするの!?」
秀「嫌われようとなんてしてないだろ!?俺は事実を言ってるだけだ!」
薫「何で事実だって決め付けるの!?秀くんのせいじゃないかもしれないじゃない!」
秀「それは違う!不良に絡まれた時も、卓己君を叱った時も、8年前の時も!薫は俺を拒絶したんだ!」
薫「拒絶なんてしてない!私はただ」
秀「いい加減にしろよ!!」
薫「ひぅっ!」
俺は何でこんなに熱くなっているんだろう。何で薫とこんなに言い争っているんだろう。
薫とこんな風に喧嘩するなんて滅多にない。いや、初めてかもしれない。
だからかもしれない。今まで薫に言えなかったことが溢れてくる。
秀「俺はただ、薫を守りたいだけなんだ。薫は知らないかもしれないけど、俺は怒りで我を失うことがあるんだ。8年前のことも、俺が桐原達に何をしたか覚えてないし、最近もあった。
俺は自分の知らない所で、他人を傷つけてるんだ。俺は、そんな俺から薫を守りたいだけなんだ。薫に矛先が向かないように」
俺の奥底に眠っている親父の血。そのせいかどうか知らないけど、いつ薫を巻き込むかわからない。
そう思って出した結論。薫を守りたい一心で出した結論。これ以上薫を傷つけないための結論。
秀「薫、俺はやっぱり薫に近づき過ぎたんですよ」
薫「そんなことないよ…」
秀「これ以上、俺のせいで薫が傷つかないようにする必要があるんです」
薫「何言ってるの?」
秀「だから、薫…」
薫「嫌…、それ以上言っちゃ嫌だ…。傷つけたくないんでしょ?だったら、それ以上言わないで…」
俺が何を言いたいのかわかったのか、薫は力無く俺を止めようとする。
だけど、薫のためにも、こうするしかない…。
薫「嫌だよ秀くん…、言っちゃダメ…、それ以上言ったら戻れなくなるから!」
秀「薫…」
薫「ダメ…言わないで!お願い秀くん!」
秀「俺達、別れましょう…」
屋上に風が吹いた。
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