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―――薫side―――
校舎内に戻った私は、トイレの個室にこもり泣いていた。
夢が現実になってしまった。
あの夢と違い、秀くんはずっと秀くんのままだったけど、それでも泣かずにはいられなかった。
秀くんは私のために別れるって言った。たぶんこの言葉に嘘は無い。秀くんは私のことを想って別れを切り出したんだ。
だけど、こう思ってしまう。
私を想ってくれてるなら、私の気持ちも考えてほしいって。
想い出がほしかった。だから迫った。あんな恥ずかしいこと、二度とできない。ただ、本当に秀くんに抱きしめてもらいたかった。
ちょっとでも強く秀くんを感じたかった。もう最後かもしれないから。
だけど、それも叶わなかった。
きっともう、秀くんに触れることは無い。
真「土御門、か?」
いきなり扉の向こうから真柳ちゃんの声が聞こえた。
薫「ま、真柳ちゃん?どうし、たの?」
真「それはこっちの台詞だ。階段を下りてきたと思ったら、全力疾走でここに入っていったから、心配で来てみたら…、何があったんだ?」
薫「私は大丈夫、だよ?だから心配、しないで?」
よく聞こえなかったけど、真柳ちゃんのため息が聞こえた気がした。
真「………お前が言いたくないなら、無理には聞かない。だけど、他人に話すだけで少しは楽になると思うぞ?」
薫「真柳ちゃん、ありがと…」
真柳ちゃんって、本当にすごい人だと思う。
才色兼備で他人の面倒見もよくて、頼りたくなる存在。
私の自慢の友達。
だから、
薫「…真柳ちゃん、うまく喋れないけど、聞いてくれる?」
真「あぁ。言ってみろ。無理なら途中で止めてもいいからな」
真柳ちゃんに屋上であったことを話した。
もちろん、服を脱いだりしたことを除いて。
途中でやっぱり涙が出てきてうまく喋れなかったけど、真柳ちゃんは黙って聞いてくれていた。
本当に完璧な人。真柳ちゃんに欠点なんてあるのかな?
あ、怖いの苦手だった…。でも、あれはあれで、かわいかったから欠点じゃないか。
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