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真「…そうか。辛かったな、土御門…」
私の話を聞いた真柳ちゃんの第一声がこれだった。
薫「そんなこと、ないよ…。秀、くんは、私を想って…、だから…」
真「土御門。ここ、開けてくれるか?」
個室のドアがノックされる。
あまり泣き顔を見られたくなかったけど、真柳ちゃんのあまりにも優しい口調に体が動いた。
真柳ちゃんは個室に入ってくるといきなり、
真「土御門…!」
薫「ふ、ぇ?」
思いっ切り私を抱きしめた。
真「辛いんだろう?悲しいんだろう!?なのに何で無理をするんだ!?」
薫「私は、大丈夫だか、ら…、平気、だから…」
真「土御門!自分に嘘をついてまで蔵屋を正当化しなくてもいい!お前が辛くて悲しくて苦しいなら、それに従えばいいんだ!誰も文句は言わないから、だから…な?我慢しなくていいんだ。自分が本当にしたいようにしていいんだ」
薫「う、ぁ………うあぁぁぁぁぁあああああぁぁぁ!!!」
もう、言葉が出なかった。まるで赤ちゃんのように泣いた。泣き叫んだ。
今までの比にならないほど、思いっ切り泣いた。息ができなくて、死んじゃうんじゃないかってほど。
真柳ちゃんはずっと私の頭や、背中を撫でてくれていた。私が泣き止むまでずっと。
真「もういいのか?」
薫「うん、ごめんね真柳ちゃん」
真「謝るくらいなら、お礼を言ってほしいけどな」
薫「ふふっ、ありがと」
真「あぁ」
私が泣き終わると、自然とそんな会話ができた。
立ち直ったかどうかで言えば、立ち直ってないんだけど、スッキリした。
薫「文化祭の準備しなくちゃね」
真「そうだな。まだ時間はあるが、早く終わるにこしたことはない」
薫「私も頑張ってケーキを作れるようになるんだよ!」
真「それは…、まぁ、頑張れ…」
薫「うんっ!ここで家事ができない女から脱却してみせるんだよ!」
真「そ、そうだな。応援するぞ。………一応」
この時真柳は、『生クリームを牛乳から作ろうとした奴が何を言っている』とは言えなかった。
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