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……ロランがゴルゴー海峡を渡り始めた頃、海峡より120km程南東にそびえ立つ、『雲切り山脈』の向こう、 ネンヤ=ルースでは……
::ネンヤ=ルースは国土の70%以上を湖に占められたパルティ=メイス王が治めるエルフの国(ネンヤとは水を意味するエルフ語)。::
「エルフィン!!…エルフィン!!起きてくれ!……エルフィン!!」
ネンヤ=ルース第一の湖ネンヤ=ルミス:則ち始まりの水:の水辺のマルローン樹の下で一人のエルフが上を向いて叫んでいた。
その視線の先の太めの枝がサワサワと揺れる…
「なんだい…?こんな時間に…。」
さっきまで何も見えないと思っていたマルローン樹…
そのちょうど真ん中辺りの二股に分かれた太くしっかりした枝の間にエルフが一人、横になって浮かんでいる。
ゆっくり登りだした太陽に照らされたエルフィンと呼ばれたエルフは、上半身を起こし下を見ている。
何も無い様に(本当に浮かんでいる様に見えた。)見えていたが太陽の光を受け始めた今…キラキラ輝くハンモックの上から下に居るエルフに尋ねた。
「やぁ、ご機嫌よう。」
「まったく呑気なことだね…兎に角降りて来てくれ!」
ハンモックと同じ質のロープを垂らしたエルフィンはスルスルと素早く、そして平地を歩くように楽々降りてきた。
「どうしたって?」
「それが…、昨夜君と夜番を変わって少し経ってからなんだけど、一艘のボートがネンヤ=ルミスの西岸すれすれをアル=メイデルに向かっていたんだよ。」
「へぇ、じゃあそれはエルフじゃないね、夜の湖にでるエルフなんて聞いたこと無い。」
「そうなんだ、だから不審に思ってそのボートにそっ~っと近ずいたんだ、アル=メイデルのニンゲンだと思ったからね。」
「…違ってたのかい?」
「うん…そのボートには…『小さい人達』が二人乗ってたんだ。」
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