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「彼等は泳げないし、船のあつかいもおぼつかない…余程必要に迫られないとそんな事しないさ。」
エルフィンのもっともな答え…もう一人のエルフはちょっと迷う仕草を見せた。
「あったんだよ……、余程の事がね。私は彼等を捕え(と言っても縛ったり目隠ししたり、乱暴な事はしていないがね。)王の元に連れていったんだ、小一時間話を聞いた王は、私にこう仰ったんだよ…。」
「《この者達と共に虹の塔まで行き、我が書状を賢人に届けよ!》と、…ね。」
そして彼は、辛そうな顔をした…。
エルフィンはそれを見逃さずにっこりと、優しい表情で口を開いた。
「それで?…君らしくもないな、言ってくれないか…私に何をして欲しいんだい?」
「親友よ!すまない!!私の代わりに行って貰えないか?」
そう言いながらも彼の表情は変わらず、いや…さらに苦痛が増しているかのように、顔をふせ眉間にしわを寄せた。
エルフィンは変わらず優しさに満ちた目をかれに向け、話を続けた。
「とにかく、何があったのか話してくれないか。君のそんな顔を見たくはないし、君の頼みを簡単には断れない。分かるかい?親友よ!」
「すまない…。王は私が今この地を離れる事が出来ないと告げると、エルフィン…君を呼ぶ呼ぶように仰ったんだ。」
「解ったよ、準備が出来しだい王の元に参りますと伝えておいてくれないか。」
「すまない…エルフィン…すまない……」
彼はその美しく、神秘的な深さをたたえたエルフの瞳から涙を溢れさせた。
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