第一章 賢人の過ち

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「さて…。まずはサロンよ、さっきあんたは『敵』と言ったな、その話を聞かせてくれんかね。」 サロンは覚悟を決めたように頷き、大きく息を吸い話を始めた。 「先ずは…『黒雲の指輪』の事から説明するべきじゃろうと思う。」 マウラとファウメルは口を開かず静かに頷く仕草を見せた。 「まずこの世にある『九つのちからの指輪』、ニンゲン族が持つ『雷の指輪』・『風の指輪』、エルフが持つ『森の指輪』・『水の指輪』、わしら賢人会が持つ『知恵の指輪』・『火の指輪』、ドワーフ族が持つ『土の指輪』、そして…ホビット族が持つ『肥養の指輪』じゃ。この中には非常に強い力を持つものもあるし、直接何かの害にならない物もある。ここまでは二人ともご存知の通りじゃな。では『黒雲の指輪』とは何か…それを造ったのが…わしらの『敵』なのじゃ。」 :やはり、しかし違うと言って欲しいものじゃ。:マウラの顔はそう言っているようだった。 サロンはそれを悟っていながら最悪の報告を続けた。 「マウラ…残念じやが…あんたの推察どうりじゃ、わしらの…いや、この世の生きるもの全ての『敵』は・・・・・・、ダグ=メーザ国の北、ゴルガス雪山…ダグ=メイスの扉の向こうに居る!」 ::ダグ=メイスの扉。それは、エルフが森や湖に住むようになるよりも…ホビットやドワーフがこの世界に現れるよりも…ニンゲン族がまだ四本足で歩いていた頃よりも前から“そこ”に在った。 賢人達が『虹の塔』で暮らし始めた頃から…。::
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