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ミッドラン国の騎士団長ロランがゴルゴー海峡を渡り、海岸沿いに(人目を避けながら)歩き始めてから三日目の正午過ぎ・・・・・・・・
ロランは『夜の森』の東の入り口にたどり着いた。
「この森の向こうか……。」
この『夜の森』に間する色々な噂を思いだしたロランの顔は次第に険しくなっていった。やがて覚悟を決めて歩き始めた。
森に入り一時間も経たない内にロランはすっかり道(道らしい道は無いのだが…)に迷っていた。
「参ったな…さっきから同じ所を何度も通っているような気がする。」
まだ正午を過ぎたばかりにも関わらず、森の中は暗かった。
森の木々は幹は太く背が高い。
いびつに腕をひろげた枝には、まわりを棘に覆われた硬い葉が生い茂っており、太陽の光を遮っている。
更に歩き続けるロランの前に、思いもかけないものが現れた。
なんと子どもが二人、きりかぶに腰掛け足をぶらぶらさせながら何か話をしている。
不思議に思ったロランは、:魔物の類ではなかろうか?:と疑いながら木の陰に隠れ様子をうかがった。
「僕達いつになったらこの森から出られるんだろうねぇ…ねぇ、パルム兄さん。」
「そうぼやくなよ、ポルム。あの『綺麗なひと』が調べてくれてるんだからさ。」
隠れて聞耳を立てているロランだったが、背中に微かに風の動きを感じて振り返る。
それと同時に後ろから呟く様に小さいが美しく、気品のある声が聞こえた。
「動くな!じっとして居てくれたら傷付けたりはしません。」
ロランの背中にはナイフのような物がつきつけられていた。
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