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彼はロラン、ミッドラン騎士団の千人長を任される程の人物である。
彼はその日の早朝、まだ空には星々がうっすらと瞬く時間に王に呼び出された。
全てが…草木や風までもが寝静まるこの時間…ロランは只ならぬ胸騒ぎ覚え王の待つ玉座の間にかなりの速さで歩いていた::只事では無さそうだな…急ごう::。
扉の前に居る守衛二人に声をかけ玉座の間に入る。
正面の玉座には…銀色に輝く鎧を身に付け、まるでこれから出陣するかの様な出立ちのアラン王が一人待って居た。
ロランは驚き危うく声を上げそうになった…が、アラン王の膝の上におかれた銀の角笛に気付き出来るだけ落ち着いた口調で尋ねた。
「おはようございます、かような時間に私をお呼びになるとは…」
「うむ、ロランよ!アル=メイデル国の西の端にある森を知っておるな?」
「はっ!なんでも夜の森と呼ばれているとか…。」
「そうじゃ…、そなたにはその森を抜け虹の塔に行って貰いたい。」
「虹の塔?では賢人の住まう塔が実在するのですか?」
「うむ。そして賢人長マウラにこの書簡を渡してくれ。」
「承知致しました。」
ロランは書簡を受取り腰のベルトに固定した。
「そなたにこれも託そう。」
王が差し出したのは先程認めた角笛と一振りの大剣だった。
「なんと!!これを私に?」
「その意味が解るな?」
そのしわに包まれた瞳には涙がにじんで居た。
王の言葉にロランは一言も答えられず…只頷いた。
その瞳には同じ様に涙を浮かべて……。
そして緊急の密命をその身に帯てロランは城を発った。
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