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タルは一通り部屋の説明を済ますとすぐ食事を用意すると言い残し急いで出ていった。
タルの足音を聞きながらロランは……。
「この旅で一番疲れるのはこの宿の主人の相手かもしれんな…。」
と、呟きながら椅子に腰を下ろした。
20分もしない内にまた騒がしい足音が聞こえタルがドタドタと入って来た。
「ほい!ロラン様ちょいと失礼いたしやすよ。なんせこの時間になるとあっし一人っ切りなもんでね。」
ビア樽に手足が生えたような体型の割にかなりの速さで、みるみる食事の用意が整って行く。
「それじゃあ、ごゆっくりなすってくださいやし。」
「あぁ、すまないなゆっくり頂くとするよ。」
「では、ご用がありましたら遠慮なく怒鳴ってやって下さいやし。」
ロランは内心やれやれと思いながら笑顔で答えた。
タル=クアルとは<有りのまま>または<無頓着>と言った様な意味であり、そんな名にぴったりな男だった。
でっぷりと太っており表情はこの上なく豊か、人のよさがにじみ出ておりヤギの様なあご髭を生やしている。
ロランはこの男は相変わらず憎めないやつだと思いながら食事を済ませた。
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