妖鬼、所望。

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魔導帝国ネクロス。 その名の通り、魔導の研究が盛んに行われる国。そのため、多くの魔導士や研究者が集まる。 この国は今、危機に瀕していた。 ルスラン王国・アザルト連邦二国を相手に三つ巴の戦いを展開していたが、長きに渡る戦に少しずつ力が弱まり始めたのだ。 もともとが魔導士を中心とした軍隊であるため、押しに押されてしまえば成す術はなく、とうとうアザルト軍がガラン城まで押し寄せてきた。 「全てが最悪だ」 不機嫌を隠そうともせず、ネクロスの王・ネフィリムが口を開いた。 「このまま行けばガランを落とされるのも時間の問題ですね」 それに返したのは仮面を被った青年、将軍アルケイン。グラスをくるくると揺らしながら、ため息混じりに言葉を吐き出した。 他の二人の将軍、メリーメリーとフェルトは沈黙している。片方は王の様子を伺いながら、片方は興味なさげに。 「そこでだ。 新たに将軍を呼び寄せることにした。 無論、腕は確かだ。フェルト、お前のよく知る女だぞ…」 ぴくりと体を揺らすと、フェルトはネフィリムに顔を向けた。 「……アイシャか」 ぽつりと呟いた名前に、アルケインがびくっと体を弾ませる。ネフィリムは、小さく頷いた。 「そうだ。あれは侵略戦にこそ向かんが、こと防衛に関しては凄まじい。 この気に食わん状況を打開するには、うってつけの人材だろう」 「その分、毒も強烈だがな」 皮肉げに吐き捨てるフェルトに向かって、王は口許を笑みの型に歪めて言い放った。 「毒のない蛇など必要ないわ」 .
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