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日も傾きかけた放課後。
夕日の映る窓の反射が欝陶しく感じる。
俺は早朝、下駄箱の中に入れられていた一通の手紙の内容通り行動をしていた。
『体育館裏で待っています。』
ぼつぼつと顎の辺りから産毛が生えてきた男達には、到底、再現出来そうもない綺麗な文体を見れば、この手紙は、茶化しではない事を物語っている。
この時間帯なら、いつも部活動を行う体操着を着た生徒達が、この渡り廊下を伝い、校舎や今から向かう体育館を行き交っているのだが、今日は、誰一人として体操着を着た生徒などはいなかった。
何故なら、今日は終業式。
たいていの生徒は、終業式が終わると各自家に帰宅する。
中学生の最後という事で、グラウンドで名残惜しそうに遊んでいた卒業生達もいたが、もう既にその姿はない。
一階の校舎から体育館に繋がる渡り廊下を歩き続け、体育館裏に着くと一人の女の子を見つけた。
隣のクラスの三浦さんだった。
どうやらあれが、手紙を書いた張本人である。
正直、三浦さんとはあまり会話を交わした事はなかった。
確か、同じクラスの飯田が凄く気にかけていた子だったような気がする。
彼女は夕日の方をずっと見つめながら、両手で持った鞄をぱたん、ぱたん、と膝に当てたりしている。
誰かを待っている、というサインである。
人がやって来る気配に気付いたのか、こちらを振り向いた三浦さんは、俺だという事を確認し、手を振っていた。
俺も手を挙げる。
「 ごめん、遅くなった 」
「 いっ、良いよ!
全然、気にして無いから!! 」
彼女は、頬を紅潮させ、思いきり首を横に振っていた。
「 で、話って何かな? 」
彼女は黙り込んだ。
そこで会話が途切れる。
張り詰めた空気が二人を襲う。
この場所だけ時間が止まっているんじゃないかとも錯覚してしまう。
急にやってくる背中を襲うむずむずとした感覚に、俺は逃げ出したくなる衝動に駆られてしまう。
彼女が何を言おうとしているのか、大方分かる。
意を決したのか、女の子は拳を握りしめ、溜め込んだ感情を一気に爆発させるかのように言い放った。
「 あ、あの……!
瀬戸君の事がずっと前から好きでした!
付き合って下さい!! 」
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