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「ねえ」
嫌だ、嫌だ
「ねえ、何故愛してくれなかったの?」
「ねえ、何故私でなくあの男なの?」
「ねえ、何故泣いてくれなかったの?」
嫌だ、嫌だ、止めてくれ
それ以上はどうか、
「ねえ、花の呪いをあげましょう」
ひゅ
短く息をのみ反射的に顔を上げて、見開いた目に彼女を映す。
笑う彼女は、あの日棺桶の中青い花に埋もれていた事が嘘のように見える。
彼女は右手をこちらに掲げ、まるで呪文のように言葉を紡ぐ。
「これは私の涙」
「涙は想いから湧き、瞳の色を映し、溢れ頬を伝いさらに想いを搦め捕る」
「そして」
動け、逃げろ
嫌だ嫌だ嫌だ
思いと反して身体は固まったままで、瞳は彼女を映したまま動かせない。
「種へ」
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