第二章 猫は出会い頭に驚く

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「もう、なんで私に黙って引っ越しちゃうの!? お父さんもお母さんもクロちゃんの転居先教えてくれないし! 会えなかった三年間、私がどれだけ心配したかわかる!? どれだけ寂しかったかわかる!?」 元姉上様が、俺を叱責しつつ襟首掴んで前後にがっくんがっくん揺らす。 やば、これは、酔う…… 「OK.雛汰、気持ちはわかるが、少し落ち着け」 両手を上げて降参のポーズ。 ったく、揺らされたお陰で、なんかイントネーションが波打っちまったぜぃ。 「クロちゃん、私を呼ぶときは雛汰じゃなくて、ヒ・ナ!」 俺の襟首を解放しつつ、むくれて言い放ちやがった女が、俺の年子の元姉、高杉雛汰(タカスギ・ヒナタ)。 ちなみに興味はないだろうが、俺は猫谷黒(ネコタニ・クロ)本名だ。 「だったらいい加減、ちゃん付けは勘弁してくれよヒナ」 おぉ、なんか地面が揺れてる気がする。 世界は震度1か2か。 「私の方が3ヶ月お姉ちゃんだもん、弟にはちゃん付けでいいの!」 えっへんと胸を張る。 ……三年間で、随分と成長したものよ。 主に胸囲的な意味で。 「あ? 俺高杉家の養子じゃなくなったんだけど?」 「え――?」 ヒナがしばし固まり、ややあって――
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