第二章 猫は出会い頭に驚く

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「えええ『キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン』 ヒナの叫びをチャイムがかき消す。 って、おいおい! このチャイムは、まさか! 携帯で時間を確認。 ……間違いない。 これは、入学式早々遅刻だ。 「あ、あれ? クロちゃん、このチャイムは、まさか……」 ヒナが今更顔色を失う。 気づくの遅ぇよ! 「話は後だな。 とりあえず教室に急ぐぞ!」 ヒナを促して走り出す。 「え、でも教室は!?」 「昇降口前に張り出してあるはずだ! ソッコで確認して、各々の教室へ全力ダッシュ! OK.?」 ヒナが頷くのも見ずにフルアクセル。 お次がフルブレーキ。 「俺のクラス! 俺のクラス! ……あった! 2組か。了解!」 「私も2組! 一緒だよ、クロちゃん!」 喜んでる場合か!? 喜色満面のヒナの手を引っ付かんで全力疾走! 教室は四階の真ん中。 最短距離は、昇降口奥の中央階段を正面突破。 「届け、雲耀の速さまで!」 「クロちゃん、速いよ!」 「ゆっくりしてる、場合じゃねぇ!」 腹のそこから叫び、階段を駆け上がる。 それこそ、某階段部が裸足で逃げ足すくらいの速度で。 そして―― 「ぜー、はー、お、遅れてすみましぇんでしたぁ」 「………………」 なんとか教室に到着する。 しんどい、声だしたくない。 「初日から遅刻とは、これはまた随分と珍プレーだな? あれか、横の彼女とヤりすぎて寝坊でもしたか? 彼女は随分とぐったりだが。 え? 猫谷黒と、高杉雛汰」 恐らく担任となる女教師が、ニヤリと笑いながらセクハラ発言。 俺の高校生活は、こうして穏やかならぬ幕開けで始まった。
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