第一章 猫は餌やりばばあによくなつく

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『黒猫のタンゴ🎶タンゴ🎶タンゴ🎶僕の恋人は黒いね』 「やかましわい!」 殆ど叩き潰さん勢いで突如大音量で懐メロを流し始めた携帯のマナーボタンを押す。 「うぃっきし! 寒ぃなちきしょうめ」 くしゃみに悪態をつきつつ携帯のサブディスプレイを睨む。 時刻はAM06:25 アラームを設定した時間だ。 「……やっちまった」 現在の俺の状況。 バッテリー切れで沈黙したDSを手に、炬燵に突っ伏した状態。 何をやっちまったって、ゲームはRPGでセーブしたのは遥か昔。 おまけに一晩ずっと炬燵をつけっぱなしだったんだ、電気料金の明細見るのが怖いなぁ、もぉ。 とどめに、某自分の半生を波瀾万丈に語る番組に出て、小学卒業から中学卒業までを語る夢を見ちまったし。 厄日か今日は。 まぁいいや。 飯でも食って、本日の吃驚どっきりメカ……もとい、メインイベントに備えますか。 冷蔵庫🎶 冷蔵庫🎶 ……おい、マヨと醤油以外何もないって、俺はどこの貧乏苦学生だよ? 「あっりえね~!」 俺の声がボロい六畳一間に木霊する。 俺が住んでるのは、俺と大家の婆さん以外誰もいないボロアパートだ。 ゆえに近所迷惑の心配なし! 『うるさいよ! この糞餓鬼が、今何時だと思ってんだい!?』 「テメーのが声でけぇよばばあ! うるさくしてごめんなさい。 今月は家賃早めに納めるんでゆるしてください」 反抗しつつ素直に謝る。 それが俺クオリティ。
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