第一章 猫は餌やりばばあによくなつく

3/5
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「全く、最近の子供は計画的に買い物もできないのかい!?」 悪態をつきつつ、大盛りのどんぶり飯を俺につきだす婆さん。 現在位置は俺の隣の部屋。 要するに、婆さんの部屋だ。 「いや、面目ない。 まだ卵くらいはあるかな~、て思ったら、醤油とマヨネーズしかないとは……」 合掌し、頂きますと宣言してから頂く。 これマナーね、マナー。 メニューはどんぶり飯、豆腐と大根の味噌汁、焼き鮭。 なんともオーソドックスな日本の朝食で。 「あんた、中学卒業してもあたしに飯たかる気かい? もうちょっとしっかりおしよ。 あんた、今日から高校生なんだから」 そう。 俺は今日からこの猫又の町にある、猫又高校の一年生になる。 「いやぁ、中1の頃から慣れ親しんだ、この味に別れを告げるのはちょいと寂しいもんだなぁ」 しみじみ呟きながら味噌汁をすする。 「はん、おだてたって何も出やしないよ! ……貰い物のゼリー、余ってるから食ってきな」 口は悪いが人情派。 そんな気のいい婆さんとの付き合いも四年に入ったのか。 あらためて、しみじみとこの町に来た時を思い出す。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!