第一章 猫は餌やりばばあによくなつく

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『それはいい。すぐに準備しよう』 それが、小学校の卒業を機に、家を出ると言った俺への言葉。 顔は笑顔。 改めて気付かされる。 俺は、要らない子なのだと。 学校からなるべく近く、家賃の安い場所。 できれば、付近に商店があると良い。 両親は、なにくれと無く動いてくれた。 その結果、あの婆さんに会えたのだから、そこは素直に感謝しよう。 『高校までは、面倒を見よう』 『独り暮らしは大変だろうから、無理して帰ってこなくていいからね?』 そういう両親に、誰が帰るか糞呆けがと笑顔で言い捨てて、俺はこの町に来た。 『しょぼくれた顔のガキだね』 それが、婆さんの唯一の店子に対する第一声。 『捨てられた猫みたいな面してんじゃないよ。 独り暮らしだろ? シャキッとしな!』 そう言って、背中をバンと叩かれた。 『うっせー、糞ばばあ!』 それが、俺と婆さんの最初の喧嘩。 いらい、俺と婆さんは喧嘩しつつもうまくやって来た。 といっても、俺が一方的に飯をたかるだけなんだけどな。 婆さん曰く、 『ここらの野良猫はみんなあたしの飯で育ったんだ。 今さら大ぐらいが一匹増えたところでかまいやしないよ』 全く、ありがたい限りで。
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