第一章 猫は餌やりばばあによくなつく

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「御馳走さんで御座いました」 合掌し、頭を下げる。 「まぁ、食らいも食らったり、朝からどんぶり五杯も食ってんじゃないよ」 言いながらも、婆さんは笑顔。 『自分が作ったものを美味しそうに食べてくれて、最後に感謝してもらったら誰だって嬉しいんだよ』 ふと、唯一優しかった年子の姉の言葉を思い出す。 姉上は、どうしてるかな。 ちょっぴりセンチメンタル。 「あぁ、そうだ。 あんたの糞両親から手紙だよ」 婆さんから投げ渡されたのは、お役所の封筒。 口許がにやけるのを止められない。 中身は……ビンゴ! 俺と両親との、養子縁組の解消を証明する書類。 俺の話を聞いた婆さんが、後見人になって尽力してくれたが故の快挙。 もうあれだね、俺婆さんに足向けて眠れないわ。 「あんたの両親も、なんで必要のない養子縁組なんてしたのかねぇ」 呆れた溜め息をつく婆さん。 「まぁまぁ……」 「あんたにも言ってんだよ! まったく、仕送りが来なくなって家賃が滞ったら追い出すからね!」 額に角を生やす婆さんに辟易しつつ時計を見る。 AM07:45 そろそろ行かないと不味いかな。 「婆さん、そろそろ行くわ! あと家賃なら大丈夫、あの二人、愛娘より世間体が可愛いタイプだから、未成年の養子を切った挙げ句日干しになんかできねぇよ」 婆さんの家を出て、走り出す。 新しい三年間に向かって。
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