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「総長、チーム辞められるんですか!!」
「辞めないで下さいっ」
「俺らの潤いがー」
俺たちが下の階に降りて来ると、既に騒がしい状況だった。
は? 何で?
何でこいつら知ってるんだ・・・?
俺が総長を辞めると言葉にしたのは、壱琉の部屋と2階の一室のみ。
あの場に居た者しか俺が辞めようとしていた事実は知らないはず。
「誰が、そんなことを?」
ニッコリと素晴らしい程の笑顔を浮かべ、今騒いでる奴らに尋ねる。
「ここに居た奴らからです」
一人が指先を床に向けて、このフロアに居た奴から聞いたと言った。
さっきまでは20人も居なかった一階が、3倍以上の人数に膨れ上がっていた。
チームの殆どの奴らが来てんじゃないだろうな。
「俺ら、利光さんが総長を辞めるって聞いて、町中にいるメンバーを集められるだけ集めたんです!!」
「そうっすよ!めちゃくちゃ急ぎました」
「他のチームの奴らも驚いてましたよ」
え、町中に広めたってことか?
・・・何てことを。
「誰だ、誰がこいつ等に漏らしたんだ?」
後ろに待機する友人二人に向ける笑みが、痙攣したかのようにピクピクとなった。
「「・・・・」」
どちらも恐怖を感じて一瞬、口を開けれずにいたが、お互いに目を合わせてこちらを向き直す。
そして、一斉に別々の動作をしだした。
楓は首を左右に振り、俺ではないと意思表示。
しかし、朧は開き直ったかのように満面の笑顔で左手を挙げて自首してきた。
「・・・お前かっ!」
微笑む笑顔にムカついて、朧の頬っぺたを抓み上げる。
「うぅ~、ひたぁーひぃ~」
「自業自得、ですね」
顔の両頬を真っ赤に腫らした朧が、どのように下のメンバーに知らしたのか白状した。
俺が幹部メンバーのみを3ヶ月振りに召集したことに、嫌な予感がした朧は他のメンバーにもリアルタイムで知らせれるように盗聴機を仕掛けたとか。
下に居た一人が受信機を最大音量で流し、俺が総長を辞めると聞いて、慌てて居ないメンバーを召集したらしい。
「はぁ、なんて騒ぎにしてくれたんだ」
もとはといえば、3ヶ月も音信不通だった利光が原因だとは思うが、そこは気にも留めなかった。
「うぅ~本当にぃ、ごめんなさい」
「申し訳なかったです、総長」
事の主犯者の朧と、受信機を所持し、最初から最後まで聞いていた荒川徹(あらかわ とおる)は潔く行いを認めた。
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