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4月の上旬、入学式。
そんな晴れ舞台の前日に俺は森の中に居た。
都心の自宅からおよそ一時間、祖父と共に車で走り続けたのだが周りの景色は一向に変わらない。
本当に学校なんてあるのかと疑いたくなってきた。
「お祖父様、質問してもいいですか?」
「なんだい、利光」
向かいに座っている祖父に居ても経っても居られなくなり尋ねると、書類から顔を上げてくれる。
「あと、どのぐらいで高等部に到着するんですか?」
流石に一時間も同じ体勢で居ると、しんどくなってくる。
「あぁ、もうすぐだろう・・・30分程度だ」
「あ、そうなんですか・・・」
この状況で口が裂けてもまだ、30分もあるのかとは言えないな。
再び手に持つ書類に視線を戻す祖父。たぶん、理事長としての仕事の一つなのだろう。
本名は明正総一郎(めいせい そういちろう)、WPの総理事を務めている人物だ。
俺が育成学校に入るきっかけとなった人物であり、唯一の肉親でもある。
「ふむ、それにしても利光、ただ外を見てるだけでは暇だろう?これでも読んでなさい」
目の前に出されたのは学校のパンフレットらしきもの。それを受け取りパラパラとページを捲ってみる。
うわっ、建物がでかい。これ何階まであんだろ。
「それと、このカードキーも渡しておこう」
「こんなカードがキーなんですね」
キーなんだし、部屋の鍵ってことだよな。
渡されたプラチナ色のカードを受け取り、失くさないようにと、ポケットにしまう。
「今のカードは部屋の鍵だ。他にも買い物も出来るから失くさないように気を付けなさい」
「あ、はぃ」
その物言いに緊張しながら祖父の言葉を頭の中で暗唱する。
会話が終れば再び暇になってしまったので、仕方無く手渡されていたパンフレットに目を通した。
最初のページには、学校の特色やら、教育理念なんかが記されており、次のページは見開きで理事長である祖父の言葉がズラッと並んでいた。
まぁ、読むのも面倒なので、その辺はすっ飛ばしてしまったが。
学校の施設は全てがカードキーで管理されていて、色は6色で分かれているらしい。
「・・・お祖父様、もしかして僕は主席、何でしょうか?」
「あぁ、そうだ、我が孫ながら実に鼻が高いよ」
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