序 章

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廊下を突き当りまで歩き、2階へ上がると一つの扉を開ける。 「壱琉さん、お久しぶりです」 「うぉお!利光じゃねーか。ご無沙汰だな?」 ニカッと、微笑みながらハグをしてきたのは此処のマスターである志木城 壱琉(しきじょう いちる)さん。 「すみません、高校受験で一悶着あって・・・」 「なんだ?3ヶ月も連絡入れられないほど立て込んでたのか」 そりゃぁ、大変だったなと、がしがしと頭を撫でられる。 「祖父に受かるまでは接触するなって言われちゃいまして・・・」 「おっ、じゃぁ高校は受かったんだな」 「はい、でも国立の警察育成学校なんです」 「おい、利光それって」 「・・・そうです、今日は挨拶とお別れに来ました」 「そうか、後悔だけはするなよ」 意味深な言葉を残した壱琉さん。 話が済むと軽く挨拶をしてから退出していった。そして、次に向かうのは俺の親しい友人たちのところ。 同じく2階の突き当たりの部屋へノックしてから入室する。 入れば、室内にいる全員が此方に目を向けてきた。 「総長っ、途中で電話切るなんて酷いですよ」 「悪いな頼、手が離せなかったんだ」 などと、俺に突撃してきた桜井頼(さくらい らい)に下手な言い訳を並べて落ち着かせる。 「そうだったんで」 「嘘がそこまでベタだと見苦しいだけですよ、利光?」 簡単に騙された頼の言葉を途中で遮るように簡易バーのカウンターに座る一ノ瀬楓(いちのせ かえで)が笑みを浮かべながら青筋を立てる。 「楓、あ~なんだ、おはよう?」 「正直に本当のことを言っておいた方が今後のため、だよなぁ?」 「あ、あぁ!!そうだった、俺寝坊したんです、ごめんなさい」 急に口調の変わった楓に恐怖し、つい、本当のことが口からポロリと出てきてしまった。 弱いな、俺! 「そうだったんだぁ~」 「ん、朧おはよ」 サイドテーブルにノートパソコンを置いて弄っていた長月朧(ながつき おぼろ)がその手を止めて、おはよーと、手を振ってきた。 「あー、良かった☆何か事件にでも巻き込まれてるのかと心配してたんだからぁ」 「お前こそ嘘つけ。そのノートパソコンで俺の位置なんてわかってただろ」   
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