序 章

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  「それは、そうなんだけどさ・・・」 「煮え切らないなぁ、利光は僕らのそうちょーなんだからシャキッとしなくちゃ!」 楓は疑問を口にし、朧は再び地団駄を踏んで口を挟んでくる。 そうだ、俺が自分で決めたことなんだ。 人の上に居る者として、けじめはしっかりと付けてから出て行こう。 「俺、4月から全寮制の学校に入るから」 「え、総長・・・全寮制って」 「・・・・・」 流石に皆気付いたみたいだ。全寮制で俺が入りそうな高校が何処かってことを。 祖父がWPという警察組織の役員であり、育成学校の理事長も務めている。それは皆が認知していることだった。 楓もちょっとビックリしたと言いながら、納得する。 「そこってやっぱり、警察育成学校、だよね?」 「あぁ、そうなる」 警察育成学校とは、通称ワールドポリス【WP】という組織が、次世代の警察官を育成するために独自の技術を持って創った学園だ。 学園の教育は全て最先端技術で行い、今では警察官だけでなく幅広い人材の育成へと傾向が移ってきているらしい。 国家が経営に投資しているほどで当然、レベルは高く、最先端なうえ警備も堅いので重役の子息も多く通っているとか。  そんな学校を皆に黙って受けたのも、唯一の身内である祖父に入って欲しいと頼まれたからだ。 悩んで、考えたが、やはり答えは一つしか出てこなかった。 「利光、それはお前の意思なのか?」 壁に寄りかかったままの体勢を保ちながら、類の瞳だけは俺に向けられる。 「ああ、これは強制とかじゃない。俺が自分で考えて出した答えだから」 みんなに言うのが遅くなってごめんと、今までで一番深く頭を下げて謝る。 その際、引っ付いていた頼はオズオズと心配そうに俺を見つめながら離れていってくれていた。 「辞めちゃうんですか、Empressを」 「流石に警察学校に入るんだから族にはいられないだろ」 そう、これはチームの皆への‘けじめ’なんだ。妥協の姿勢でいたら俺の身勝手になってしまう。 だから、きっぱりと、曖昧にはせず別れを告げるんだ。 「俺は、今日で総長を辞める。みんな、こんな勝手な奴でごめんな」 「そんなこと、思ってなんかないよ!!」 朧は椅子から立ち上がった反動でマウスが落ちたにも関わらず、気にせずに声を上げる。  
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