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「僕が煮え切らないだなんて言ったからって、そこまで一人で決めなくたっていいじゃんっ!」
「そうっすよ、警察がなんなんすか!」
「利光の家のお祖父さんだって今まで何も言わなかったじゃないですか」
それなのに、どうして?
と、楓は眉間に皺を寄せながら尋ねてくる。周りの奴らも似たような顔つきだ。
考えてることは皆一緒ってことか。
「祖父は関係ない。これは俺の意思で、けじめだ」
「なら、僕らが辞めないでって言えばいいの?けじめなんて必要ないって!!」
「・・・・・」
押し黙るしかなかった。
ここで口を開いてしまったら微かに残っていた彼らへの未練が惜しげもなく出てきてしまうと思ったから。
「そうなんだね?なら、僕は残って欲しいよ?学校に通いながら総長をして欲しいよ」
「俺もっ!総長には今までどおり総長を続けて欲しいな」
何十人もの瞳が全て俺に集まり、口々に想いをはしらせる。
その中でただ一人黙っていた類は、壁から離れると俺の方へ向かってきた。
「俺はお前の自由にすればいいと思ってる」
「る、類っ!!」
俺の前で足を止めた彼に、楓は焦ったように止めに入る。
しかし類は楓を一瞥しただけで、すぐに視線は俺へと戻った。
「ただ、これだけは言っておく」
「・・・なんだよ?」
言っておくと言いながら言葉を止める類に、不安を覚えた。一体なにを言われるんだろうか。
「今の総長がお前だからこそ付いてきている奴もいるんだ、俺のようにな」
そこのところを忘れるなよと、頭に軽くチョップをいれてくる類。
あ・・・そうだ。
忘れかけていた些細な事実。些細だけども決定的で、絶対。
俺が抜ければ生きる目的を失くす奴らが居る。俺が導くと約束した奴も居る。
そんな彼ら以外にも、俺を目標にしてくれている奴ら、憧れを抱いてくれている奴らが居る。
ここで‘けじめ’だと勝手に出て行けば、そんな奴らを見捨てたことになる。
「・・・ごめん」
「俺は謝罪が聞きたいんじゃない。さっきも聞いたしな。気付いたか?」
「あぁ、見失ってた」
「で、どうなんだ。気付いても答えは変わらないか?」
俺は、見捨てることが望みなわけじゃない。俺が居るだけで救われるのならば、答えは自ずとでてきた。
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