序 章

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  「何でよ~?」 「お前殆どのメンバーの弱み握ってるだろ。それを盾にして総長の代理命令なんてされたら逆らえないだろ?」 「僕はぁ、そんなことはしないよぉー、」 やっぱり剥れながら、辛亥だとばかりに言い返してくる。 剥くれ顔を引っ込め、次に浮かんだ表情は何か怪しいことを考えている表情だった。 「そんなことしなくてもぉ、他にも逆らえなくする方法はあるからねぇ」 「って、そっちかよ。やっぱ怖くて朧には任せられないな」 春から高二の朧は、後一年は受験などという問題には直面しないので適任なのだろうが、性格がオープンで黒いので任せ切れなかった。 「よっし!お前らー、こっちに注目しろ」 今決まったことを此処にいるメンバーにだけでも伝えるために大声で呼びかける。 「なんっすか総長ー!」 「騒ぐな孝輔、今から全員に話すから黙れ」 俺が張り上げた声と同じくらいの声量で真っ先に聞いてきた吾妻孝輔(あずま こうすけ)に辛辣な言葉を投げかけた。 「酷いっす!朝は朝で、やっと繋がった俺のケータイを頼にパクられるうえ、一度も話せずに切られたし・・・」 「あー、悪かった。頼むから朝のこと穿(ほじく)り返すなよ」 利光は歯切れの悪い口調で目を彷徨えさせた。 「グスン・・・うっす、判りました、総長」 「朝は電話、サンキューな。お蔭で助かった」 通話表示を見てなかったので、あれは孝輔の携帯からだったのかと思いながら謝る。 落ち着きを取り戻せば、当初の目的に戻る。 全員こちらを見ているのを確かめ、いらない話はなしで結果を伝えた。 「俺が居ない間は代理を楓に任せるから」 「はいっ、分かりましたー総長!」 元気の良い返事をして俺の腹部めがけて抱きついてくる頼。それを、反動が無いように優しく受け止めた。 前に一度だけ突進してくる頼が面倒臭くて避けたことがある。 その時は止まらずに壁へ激突していた。それ以降、避けずに受け止めてやろうと俺は決めたんだ。 「その抱き付きタックルの癖、直せよ?」 「はーいっ」 満面の笑顔で、直すつもりも無いくせに返事をしてくる。 その考えなしに返事を返す癖も直した方がいいな。 頭一個分、背の低い頼の頭を撫でながら、ふと思ったのだった。   「利光、下のフロアに居るメンバーにも報告しに行きませんか?」 頼にかまっている俺なんて興味が無さそうに楓がそう口ずさんだ。  
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