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「じゃあ此処に社を作ってくれ。それと、俺の信頼する六人も一緒に祀って欲しい。そのあかつきには、疫病を鎮め豊作をもたらし、この村を発展させると誓おう」
両手を空に掲げて高笑いする男に、村人たちは冷ややかな視線を送る。それに気づいた男は、小さく咳払いすると真剣な顔を取り繕った。
「言い忘れていたが、俺は人間が嫌いじゃない。神様にしてもらった恩もあるし、これもなんかの縁だと思っている‥‥‥‥あんたらに作られた神なら、この力。あんたらのために使ってやるよ」
村長は少し悩んだ。
平穏な日々を取り戻す為には力を借りるしか無いが、男が神様でも何でもない怨霊の類いで、騙されているという可能性もある。もしそうだとすれば村は悲惨な末路を辿るだろう———
しかし、このままでいてもいずれ村は滅びる。そう思った村長は、小さな望みに縋ることにした。
「わかりました、大神さまのお言葉を縛りとして頂戴致します。どうか貴方さまの御力でこの村を御救い下さい」
それを聞いた男は、縛りねぇ、と忌々しそうに言い残すと、風とともに姿を消した。
数日後。言われた通りに社を建ててみれば、悲惨な日々が嘘だったかのように疫病も止まり、田畑は潤いを取り戻した。さらに噂を聞きつけた人々が集まったことによって、あっという間に村は栄え、大きな町になったという。
その頃、村を救った神様を見たという噂が、町中に流れた。
満足そうに町を見てまわったり、奇妙な出立ちをした者と、夜な夜な花札に興じているらしい。花札に混ぜて貰った者も居たそうだが、面をつけた男に尽く負けたと言っていた。
「もし一葉がその神様達に会うことがあったら、宴にまぜてもらいなさい」
祖母の特別な話しは、お茶目な笑顔で締め括られた。
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