パピコに釣られて恋をする

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「ストーリーもしっかりしてて、特にラストが良かったんだよね。お母さんの霊に再会する所がまたさ‥‥」  分からないなら調べれば良いんだと、ポケットからスマホを取り出した。検索画面に『カッパ 女の子 ホラー』と打ち込んだ瞬間、 「それってじゃない?」  と、鈴を転がすような女の子の声がした。  横を向くと、黒髪ボブの女の子が参考書を閉じて此方を見上げている。  それだ!と大声で叫び、あまりの嬉しさで、女の子の机に両手をついてしまった。 「ねぇねぇ、あの最後のシーン覚えてる? お母さんが娘に再開するシーン」  俺は、ぱっつん前髪から覗く大きな瞳を、正面から覗き込む。整った目鼻立ちと、内側に巻かれたショートボブ。しかし陶器のように白い肌の所為か、冷え冷えとした印象を受ける。  馴れ馴れしく話しかけちゃったな、と少し後悔していたら、女の子が薄く色づいた唇を開いた。 「って言うシーンでしょ?あの映画って終始薄暗いのに、あのシーンだけは、母親が座ってた白いベッドのおかげで、ちょっと明るく見えたよね。私もあれを見て救われたなー」 「なるほど、セリフにばかり気を取られてたけど、演出も工夫されていたのか‥‥」  いつの間にか、女の子は参考書をしまっていた。腕を組んで頷く俺の前で、女の子もまたふむふむと相槌を打っている。 「あの母親ってさ、幼い女の子の霊に同情してあの世に行っちゃったけど、きっと娘を庇ったんだろうね」 「たしかに、母親としての強さは感じたな、娘を守ろうとする姿も良かったし」  あのシーンは最高だった、と言って頷き合う俺たちの横で、話しに入れない友だちがポカンとしていた。 「卓人って、桜井(さくらい)さんと知り合いだったの?」 「いや、今日初めて話したよ」  話したのも、ちゃんと見たのも初めてだった。しかし、桜井志音が一葉の大切な幼馴染という情報だけは知っている。
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