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「これ、なんですか?」
ブレスレットを腕に付けてみた。
水晶のずっしりした重みが、私は高級品です。と主張している気がする。
「それは魔除けの念珠。お嬢とクマちゃんにはもう渡してあるよ」
クマちゃんはきっと佐久間のことだろう。
三人お揃いのブレスレットは、ちょっと恥ずかしい。視線を逸らしたまま、ありがとう。と小さく言った時、志音の顔が頭を過ぎる。
「一迦道さん。このブレスレット、もう一個ある?」
「あ、桜井ちゃんの分なら、もうクマちゃんに託しておいから」
親指を立てて笑う一迦道は、俺の気持ちに気付いていたらしい。三人よりも四人お揃いの方がずっと良い。そう思って夜空を見上げた時、駆け寄って来る足音が聞こえた。
「一葉、早く早く!」
肩で息をする佐久間が、浴衣の袖を振り乱しながら手招きする。一緒に走って来た玲も、慌てた様子でスマホ画面を指差していた。
「八時ぴったりに花火がはじまるから、桜井さんと合流しようよ」
志音は今日、予備校があるからと言って祭りの誘いを断っていた。
みんなで浴衣着てあんず飴食べたかったな。と、四人のグループラインで話していたのを思い出す。
「でも、約束してないじゃん」
俺はそう言ってから、念珠を付けた腕で膝に頬杖を付いた。
祭りに行くのを断られてから、グループラインは沈黙していたはずだ。にも関わらず、玲は俺の腕をグッと掴み、無理矢理立ち上がらせる。
「でも、会いたいじゃん。会ってブレスレット渡して、四人で花火見たいじゃん。桜井さんだって同じこと思ってるはずだよ」
必死にスマホの時刻を確認する玲の横で、佐久間は念珠を二個付けた腕を、なんとかレンジャーみたいに、胸の前で構えた。
「花火は八時から。走って予備校まで行けば絶対間に合うでしょ」
腕を掴んでいた玲の手が、気付けば俺の手を握っていた。そのままいつかのように駆け出され、自然と足が前へ進む。
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