祭りのあと

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 志音が鉄製の扉を開けると、だだっ広い空間が広がっていた。下駄に足を通し、屋上に出ると、生暖かい風が頬を掠める。 「なんか悪いことしてるみたい」  玲がクスクス笑いながら手摺りを掴んだ。  悪いことしてるというか、もう俺たちは不法侵入者であり、お互いが共犯だ。  夜空を見上げるみんなの顔が、赤や青や緑に光る。幻のように鮮やかな花火が、夜空いっぱいに咲いた。手を伸ばせば届きそうなほどの近さだった。きらきらとした火の粉が今にも顔に降りかかりそうだった。  横に目をやると、志音が瞳を大きく開いて空を見つめている。菊や滝が空一面に広がるたび、志音の頬はさまざまな色に変化していった。 「綺麗だね」  微笑む志音の横で、佐久間が夜空に手を伸ばす。よっ!と言って火の粉を掴む動作をすると、握った拳を広げた。 「桜井さんにプレゼント」  一迦道から貰った念珠が、手のひらで煌めいている。その演出があまりにも臭くて、思わずうわっ。と声が出た。横に居た玲も、げっ。と言って眉を顰める。 「それ一迦道さんがくれた念珠でしょ?佐久間が買ったわけじゃないじゃん」 「まぁそうだけど。プレゼントはプレゼントだし」  佐久間がぶつぶつ言いながら、志音の腕に念珠を通す。花火に反射してキラキラ輝く水晶と一緒に、志音の瞳も光っていた。 「お祭りの手伝い出来なかったのに‥‥貰っていいの?」  うん、と玲が頷いて、左腕につけた念珠を見せる。 「桜井さんが付けてくれないと、四人でお揃いにならないでしょ?」  俺たちは揃って夜空に腕を翳した。  細さも長さも違う腕が四本、横一列に並んでいる。玲が持ってきたチェキで写真を撮ったが、暗いせいでぼんやりとしか写らない。そういうのも含めて、良い思い出になりそうだった。
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