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――――†――――
「あぁ・・・なんだ、もう『終わり』なのか」
妖しくも美しい月の下、1人の青年が呟いた
悲しげに・・・だがどこか満足げに
青年は呟く
漆黒の髪を風に揺らし、手には『ナイフ』を持ったまま・・・
その目には、乱暴に包帯が巻かれていた
「時間にしたら、確かに短かったかもしれない
けど、俺は後悔なんてしていない」
包帯のせいであまり表情が見えないが、口元が少し上がっているのを見るかぎり・・・青年は恐らく笑っているのだろう
青年は小さくそう呟くと、もっていたナイフを掲げる
その刃に月の光が反射し、美しく輝いていた
「今ならわかる
無茶な事、無謀な事、楽しい事、悲しい事・・・色々あったけど
それは全部、間違いなんかじゃなかったって」
-だから・・・-
青年はそこまで言うと、空いていた方の手で・・・ゆっくりと、自らの目を覆う包帯へと触れる
そしてそれを・・・一気に解いてしまった
「これで最後・・・『殺す』のは、これで最後だ」
解かれた包帯
その下から現れたのは、傷ひとつない、キレイな両目
一見して、何の変哲もない・・・漆黒の瞳
だがその瞳がうつすのは・・・
「最後に殺すのは『異端』でも・・・このツギハギだらけの『世界』でもない」
この世界の全ての『死』
死そのもの
その瞳が映すのは・・・月明かりに照らされ輝くナイフの刃に映し出された
青年の姿
『ツギハギ』だらけの・・・自身の姿
青年は自身のその姿に、僅かに笑みを浮かべていた
それから、手に持ったナイフを・・・
「最後に殺すのは・・・この『俺自身』」
自らの胸に、深く・・・深く突き刺したのだ
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